先月、課長代理を任されたばかりの私に、新入社員の指導役が回ってきた。担当することになった後輩は入社半年目で、真面目ではあるものの、報告や連絡が遅れがちで、周囲からの評価は決して高くなかった。上司からは「君の裁量に任せるから、年度末までに立て直してほしい」と告げられ、引き受けた以上は責任を果たさざるを得ない状況であった。
最初の面談にあたって、私は相手の話をまず丁寧に聞くことに徹しようと決めていた。叱るだけでは伸びないと、自分自身の新人時代を振り返って痛感していたからである。「最近、進捗はいかがですか」と穏やかに切り出すと、後輩はしばらく黙ったあと、小さな声で「申し訳ありません、正直、何から手をつけたらいいのか分からなくなっておりまして」と打ち明けてくれた。
意外であった。怠けているわけではなく、むしろ抱え込みすぎて動けなくなっていたのである。業務量の多さにもかかわらず、誰にも相談できずにいたらしい。私は「一人で抱える必要はありませんよ。優先順位は一緒に整理しましょう」と応じ、その場で案件を書き出してもらった。紙に並べてみると、急ぎの案件は二件どころか、実は五件以上に膨れ上がっていた。
翌週から、毎朝十分だけ短い打ち合わせを設けることにした。進捗を共有した上で、その日に絶対に終わらせるべきことを一つだけ決める。単純な仕組みだが、効果は想像以上であった。後輩の表情は日に日に明るくなり、遅れていた報告書も期日前に提出されるようになった。
もちろん、これで万事解決というわけではない。彼の課題は一朝一夕には消えないし、私自身もまだ指導者として未熟である。しかし、部下を責める前に、まず環境を整えるほかないのだと、今回の件を通じて学んだ。管理職において必要なのは、答えを与えることではなく、相手が自ら動き出せる余白を作ることなのかもしれない。年度末の慌ただしさの中で、この気づきだけは忘れずにいたいと思う。
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