日曜の午後、雨が降り続いていた。出かける気にもなれないので、押し入れの奥を片付けることにした。普段なら見て見ぬ振りをする箱だが、今日に限ってどうしても気になった。埃まみれの段ボールを引っ張り出すと、底の方から古いアルバムが出てきた。表紙が色褪せ、角は擦り切れている。十年以上開いていなかったものの、中身はすぐに見当がついた。高校の卒業アルバムだった。
一ページずつめくっていくたびに、忘れかけていた顔が次々と浮かび上がってくる。名前は思い出せるものの、どんな声だったかは既に曖昧だ。集合写真の隅に、自分の姿を見つけた。緊張した表情のまま、無理に微笑もうとしている。当時はそれが大人びた顔だと思っていたが、今になって見ると、ただの子供にすぎない。
ページの間から、一枚のメモが滑り落ちた。「卒業しても連絡してね」と、丸い文字で書かれている。差出人は、二年生のときに同じ部活だった子だ。卒業以来、一度も連絡を取っていない。あの時、返事を書いたかどうかさえ、最早覚えていない。書きそびれたのか、書いたのに送らなかったのか。どちらにしても、十数年も経った今となっては確かめようがない。
窓の外では、雨脚が一層強くなっていた。アルバムを閉じて、棚に戻そうとしたが、ふと手が止まった。捨てるには忍びなく、かといって毎日眺めるものでもない。結局元の箱に戻し、テープで封をした。次にこれを開けるのは、また十年後だろうか。或いは、二度と開かないかもしれない。
片付けというのは、過去との距離を測り直す作業なのかもしれないと思った。捨てるか、残すか。覚えているか、忘れるか。その境界線は、思っていたよりずっと曖昧で、自分にもうまく説明できない。雨はまだ止まない。お茶でも淹れようと、私は静かに立ち上がった。
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