十二月二十三日(月)深夜一時半
終電に間に合わないどころか、タクシーを拾うことすら難しい時間に帰宅した。年末進行のせいで、ここ二週間ほどは毎晩日付が変わってから会社を出るのが当たり前になっている。体は疲れているものの、頭だけは妙に冴えていて、すぐには眠れそうにない。
玄関を開けた瞬間、部屋の空気がひんやりとしていて、暖房を切ったまま出かけた朝の自分を恨めしく思った。電気もつけずに台所まで歩き、冷蔵庫から作り置きの味噌汁を取り出す。温めている最中に、ふと流しに積まれた三日分の食器が目に入って、ため息がもれた。洗い物をためてしまったばかりに、これから三十分は余計に起きていなければならない。
「もう、何やってんだろうな、私」
声に出してつぶやいてから、独り言が増えたことに自分でも少し驚いた。一人暮らしを始めて五年、気がつけばこんな時間に台所で独り言を言う人間になっていた。別に寂しいわけではないのだが、今夜に限っては、誰かの相槌が欲しくてならない。
今日の午後、母から短いメッセージが届いていた。「年末、帰ってくる?」ただそれだけの文面だった。返事を書こうとして、何度も打ち直したあげく、結局「まだわからない」とだけ送ってしまった。親に気を遣わせまいとして、かえって突き放したような返事になってしまうのは、いつものことだ。
仕事が忙しいから帰れない、というのは半分本当で、半分は言い訳でもある。実家に帰れば、進路のこと、結婚のこと、昔と変わらない質問が待っている。それを面倒だと思ってしまう自分が、年々嫌になっていく。
味噌汁を一口すすると、母が昔よく作ってくれた味に少しだけ似ていて、不意に目の奥が熱くなった。泣くほどのことではないのに、疲れていると涙腺がゆるむものだ。
迷った末に、もう一度携帯を手に取って、「三十日の夜に帰ります」と送った。既読はすぐにはつかなかった。母もきっと、もう寝ている時間だ。
明日もまた会社か、と思うと気が重いが、少なくとも年末の予定が一つ決まった。それだけで、洗い物をする気力も、なんとか戻ってきた気がする。
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