水曜日になると、白髪の男の人が店に来る。いつも同じ時間、午後三時ごろだ。小さな花屋を始めて三年になるが、雨の日も風の日も、彼が来なかったことはない。買うのはいつも白い菊だった。五本だけ。何も言わず、お金を置いて、静かに帰っていく。
私は最初、彼は奥さんのお墓に供えるのだろうと思っていた。毎週欠かさず花を買うなんて、そうとしか考えられなかった。でも、ある水曜日、いつものように花を包んでいるとき、思い切って聞いてみた。
「あの、失礼ですが、この花はどなたに……」
男の人は少し驚いた顔をしたが、やがて静かに笑った。
「娘にね。三十年前、六歳で亡くなったんです。白い花が好きな子でした。妻が去年亡くなってから、代わりに私が持っていくようになりました」
私は何も言えなかった。三十年というのは、私が生きてきた年数よりも長い。それでも彼は、毎週水曜日、忘れずにこの店に来る。
「娘は花をもらうたびに、笑ってくれるような気がするんですよ」
そう言って、彼はいつものように花束を受け取り、静かに店を出ていった。窓の外は、少しずつ夕方に変わりはじめていた。私は、なぜか涙が出そうになった。これからは、水曜日が来るのが、少し違う気持ちになるだろう。
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