今でも、初めて納豆を食べた日のことを覚えている。大学に入って、東京で一人暮らしを始めたばかりの春だった。
アパートの近くのスーパーに行ったら、セールで納豆が三パックで百円だった。安いと思って、よく分からないまま買って帰った。
部屋に戻って、ふたを開けたとたん、へんなにおいがした。正直に言うと、少しこわくなった。でも、せっかく買ったから、食べてみることにした。
母に電話して聞いたら、「しょうゆを入れて、よくかき混ぜたら、おいしくなるよ」と言われた。私は言われたとおりに、はしで何回もかき混ぜた。混ぜれば混ぜるほど、白い糸がたくさん出てきた。
あたたかいごはんの上にのせて、一口食べてみた。思ったよりやわらかくて、味もわるくなかった。ただ、においにはまだなれなかった。
次の日も、その次の日も、私は納豆を食べ続けた。そうしているうちに、だんだんすきになっていった。今では、朝ごはんに納豆がないとさみしく感じる。
日本の食べ物は、すぐにすきになれないものもある。でも、何度もちょうせんしてみたら、きっと新しい味に出会えると思う。納豆は、私にとって、東京での新しい生活の味だ。
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