朝、目を覚ますと、窓の外が白くけぶっていた。霜が降りたのである。今年初めての霜だった。
縁側に足をおろすと、板の冷たさが足の裏から這いあがってくる。庭の草木はすっかり色を変え、葉の縁に白い結晶をまとっていた。昨夜の冷え込みとともに、秋はついに深まりを迎えたらしい。
空は青く澄みきり、遠くの山々が一段とくっきりと見える。息を吐くたびに、白い湯気が朝の光の中へほどけていく。冷たい空気を胸に吸い込むにあたり、肺の奥までが洗われるような心地がした。
畑の野菜はうなだれ、葉先から露とも霜ともつかぬ雫が落ちていた。収穫を控えた大根が、その葉をだらりと広げたまま、じっと朝日を待っている。農家の方々にとっては一日の始まりを告げる合図であろうが、私のような通りすがりの者にとっては、ただただ美しい景色に過ぎない。
足もとでは、落ち葉が霜にまみれ、踏むとぱりりと乾いた音を立てる。その音に耳を澄ましつつ、しばらく庭を歩き回った。昨日まで聞こえていた虫の声は、もはやどこにも残っていない。代わって、遠くの梢で鵯が一羽、甲高く鳴いた。
季節というものは、気づかぬうちに移ろっていくものだ。夏の終わりに感じた名残惜しさが、いつのまにか冬を迎える覚悟へと変わっている。霜の一粒一粒に光が宿るのを眺めながら、時の流れとはこういうものかと、しみじみ思う。
風が吹くたびに、裸の枝が小さくしなり、細い音を立てる。この静けさの中では、どんなささやかな音までが耳に届く。
やがて陽が高くなるにつれて、白い結晶はひとつ、またひとつと姿を消し、ただ濡れた地面だけが残された。つかの間の光景に過ぎないが、だからこそ心に深く刻まれる。冬が来る前の、この静かな一朝を、私はしばらく忘れないだろう。
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