東京の下町にある小さな工房で、七十歳を迎えた家具職人・高田誠氏に話を伺った。五十年以上、注文家具だけを作り続けてきた人物である。
――この仕事を始めたきっかけは。
父が大工だったんですよ。だから木の匂いは子供の頃から馴染みがあってね。でも、父と同じ道を選んだわけではないんです。むしろ一度は嫌になって、二十歳の頃は工場で働いていました。そこで三年も続かなかったどころか、半年で辞めてしまって。結局、手で何かを削っていないと落ち着かない性分だと気付いたんですね。
――五十年続けてこられた理由は。
続けようと思って続けたわけではないんですよ。一本一本、目の前の材料と向き合ってきただけで。ただ、若い頃に比べると、今の方が怖いですね。腕が上がったにしては、失敗も見える様になってしまって。木は生きているから、同じ桜の木でも一枚一枚癖が違うんです。その癖を読めてこそ、ようやく「職人」と名乗れる。七十になってもまだ勉強中ですよ。
――若い職人に伝えたいことは。
道具を大事にしろ、と。これは譲れないですね。自分の鉋が切れないのに、木の所為にする者が多過ぎる。後、早く作ろうとしない事。急いでいい物が出来た例はないですから。客を待たせてしまう事もあるものの、納得いかないまま渡すわけにはいかないんです。それだけは、五十年変わっていません。
――これから挑戦したいことは。
挑戦、ねえ……大それた事は考えていません。ただ、後何年やれるか分からないから、一つ一つの仕事を丁寧にするだけです。弟子が二人いましてね、その子達が一人前になるのを見届けたい。それくらいです。欲を言えば切りがないですけどね。
Tokenizing… (first load downloads ~17MB dictionary)