2025年6月5日、任天堂が八年ぶりの新型据え置き機「Nintendo Switch 2」を世界同時発売してから、まもなく一年が経とうとしている。発売後わずか四日間で全世界350万台、一か月で544万台を売り上げ、歴代コンソール史上最速の立ち上がりを記録した。12月末時点での累計販売は1,740万台に達し、任天堂は2026年3月期の通期予想を当初の1,500万台から1,900万台へと上方修正した。Switch初代が発売一年で約1,500万台だったことを踏まえれば、後継機としては異例の出足である。
もっとも、今回の戦略的論点は販売台数そのものよりも、価格設計にあった。Switch 2には「日本語・国内専用版」49,980円と「多言語版」69,980円という二種類が用意されている。前者は日本国内のニンテンドーアカウントでしか起動できず、実質的なリージョンロックが復活した形である。円安と米国の関税リスクを前に、国内ユーザー向け価格を抑えつつ、海外転売ヤーによる大量買い占めを封じるための苦肉の策だ。ある半導体アナリストは、国内専用版一台につき任天堂が約160ドルの利益を犠牲にしていると試算する。Switch初代が全世界共通価格で展開されたのとは対照的に、今回は為替と地政学リスクを部品表レベルで吸収する方針へと転換した。
転売対策も過去最大規模となった。マイニンテンドーストアの抽選販売には日本だけで220万件の応募が殺到し、参加条件として「Switch Onlineに一年以上加入し、かつ累計50時間以上のプレイ実績」が課された。任天堂はさらにヤフオクとメルカリと提携し、Switch 2本体の出品を一時禁止させるという強硬手段に踏み切っている。
ハード面ではNVIDIA製カスタムSoC「Tegra T239」を採用し、CUDAコア1,536基、DLSSによる4Kアップスケーリングに対応する。Joy-Conはマグネット式に刷新され、マウスモードという新操作を搭載した。ただし真の収益源はソフトとの抱き合わせにある。同時発売の『マリオカート ワールド』はアタッチレートが96%に達し、12月末までに957万本を売り上げたが、うち810万本は本体同梱版である。つまり任天堂はハードの薄利を、事実上のバンドル販売によって埋め合わせている。続く7月発売の『ドンキーコング バナンザ』も425万本と好調で、サードパーティ各社も相次いで大型タイトルの移植を発表した。
課題は二つある。第一に、国内専用版モデルの在庫が海外の日本語学習者や訪日観光客に流出した場合、原価割れが拡大する。第二に、関税政策の不透明さが続く限り、北米向け価格の再調整圧力は消えない。それでも初代Switchが1億5,000万台を超える歴史的成功を収めたことを思えば、Switch 2は任天堂史上最も政治経済的に複雑な船出を切り抜けつつある、と言ってよいだろう。
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