三月の終わり、駅から歩いて十分ほどの公園に、今年もまた桜が咲き始めた。朝のうちに行ってみると、まだ寒さが残っているのに、木の枝の先には小さな花がいくつも開いていた。昨日の夕方までは固かったつぼみが、一晩のあいだに静かに色を変えたらしい。
\n\n公園の入り口に立つ大きな木の下で、風が吹くたびに、花びらが一枚、また一枚と落ちてくる。まるで空から白い雪が降るようにゆっくりと、地面に積もっていく。子供たちが走りながら、その花びらを追いかけている。
手を伸ばしても、花びらはすぐ指の間をすり抜けて、もっと先のほうへ飛んでいく。\n\n池のそばのベンチに座って、しばらくその様子を見ていた。水の上にも花びらが浮かんでいて、ゆっくりと流れていく。
鯉が一匹、花びらに近づいては、また静かに沈んでいった。桜の下を通る人は、みな一度は足を止めて、上を見上げる。写真を撮る人もいれば、ただじっと立っている人もいる。
\n\n春のこの時期になるたびに、不思議な気持ちになる。桜は一年に一度しか咲かないし、咲いてもすぐに散ってしまう。それなのに、毎年同じ場所で、同じように人を集める。
花が咲いているうちに見ておかないと、来週にはもう葉桜になってしまうだろう。\n\n昼近くになって、少し風が強くなってきた。花びらは空に舞い上がるように飛んで、遠くの屋根のほうへ消えていった。
家に帰る道でも、肩や髪に花びらがついていて、なかなか取れなかった。今年もこの季節が来たのだと、そう思いながら歩いた。
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